• すぎはら

レポート:4月21日第11回 哲学読書会『中動態の世界 意思と責任の考古学』2章を読む


哲学読書会『中動態の世界 意志と責任の考古学』2章にご参加くださった12名の皆さま、ありがとうございます。 哲学カフェに何度も参加されて来て議論慣れして来た方、初めてのご参加でもたくさん質問してくださる方、静かに議論に耳を傾ける方、年齢も職業も全く多様な方々集まる中で、お一人お一人が哲学の場を作ることに協力的であったことに感謝します。

文を読む中で、不確かであったところや、誤解して読んでいたところも、対話の中で糸口が見つかって行ったことを実感できた回でした。

また2章目に入った今回でしたが、初めて参加された方が「能動態とか中動態とか言語の話をしているけれども、結局私たちの生活とどう関係してくるの?」という根本的な質問をされました。

2章では特に文法に関する内容が中心だったので、ここで初めて参加された方は違和感を覚えられたことと思います。しかし、この率直な問いかけによって、もう一度「おさらい」として第1章を振り返る瞬間ができました。一人の方の質問が、ほかの参加者の助けになることが沢山あります。


2章まとめ

文責 Sugihara

さて、この回では2章「中動態という古名」を扱いました。

①中動態という名称からして、能動態と受動態の中間に位置するものだと思われがちだけれども、実は、最初にあったのは「能動態と中動態の対立」であり、受動態は中動態から派生してきた。

②<アリストテレスのカテゴリー論>

アリストテレスは、私たちが物事を認識するための普遍的枠組みを提示しようと試みたが、結局は当時アリストテレス自身が話していた古代ギリシア語の文法的なものをそのまま反映したものになっているのではないか。

「私たちの認識の枠組みは、私たちが話している言語の枠組みなのではないか」ということが、本書全体を通して重要なポイントではないでしょうか?

③<能動態・受動態・中動態の区分の起源を遡ったときに行きつく一冊の本>

現存する最古のギリシア語の文法書『文法の技法(テクネー・グランマティケ)』です。以下『テクネー』と呼びます。この書は、後の文法研究の枠組みを完全に決定づけ、その影響は今なお続いていると言います。実際現在用いられている英文用語のほとんどが『テクネー』に由来しているのです。

この書に、動詞について説明する箇所で、「エネルゲイア」・「パトス」・「メソテース」という、3つ語が登場します。 後の研究者トラクスはこれを、「エネルゲイア」をラテン語のactivum(アクティヴム)に、「パトス」をpassivum(パッシヴム)に翻訳しました。

そしてまた後の研究者が、このラテン語の翻訳を英語のactiveとpassiveに翻訳し、日本語では、これを「能動」と「受動」に訳しました。 しかし、最初のラテン語に訳される時点で、誤訳があったのではないか、というのです。

「エネルゲイア(遂行すること)」は能動態と訳し、「パトス(経験すること)」は受動態ではなく中動態と訳すべきなのではないか。 また今まで中動態と訳されてきたメソテース(中間的なもの)は、能動態でも中動態でもない例外的なものと訳されるのが正しいのではないか、という指摘でした。

④最後に、なぜこのような誤訳が起こったのかということについて考察されていました。

かつて能動態と中動態の対立があったが、それは次第に能動態と受動態の対立に変化していった。

しかし、この変化は意識されてこなかった。

だから、能動態と受動態の対立を当たり前のものとした後世の学者たちは、『テクネー』にも自分たちが当たり前とした「能動と受動の対立」の解釈へと落とし込んでしまった。 自分たちが当たり前としているモノの見方で、翻訳し解釈されるたびに、「能動と受動の対立」を活性化させ続けることになった。そしてこのことを國分氏は「本書について重要な事実」と述べています。

3章へ続く・・・・

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